帰省という言葉も無くなった

私が生まれ育った実家はもう無い。正確には家はあるが去年親が売ったので今は他人が住んでいる。大学で家を出てから帰りたいとは思わなかったこともあり実家が無くなったことに喪失感も欠落感も感じてはいなかった。昨日までは。
昨日は高校のクラス会に出る前に今年亡くなった幼なじみの家に線香をあげに寄った。その後寄り道をして実家だった家を眺めて来た。見慣れない表札と車があった。見慣れないカーテン。父が育てていた庭の黄色いバラ。何気なく通り過ぎてその家を後にした。そしてその後激しく喪失感と欠落感が襲ってきた。もう私には帰省という言葉もないのだ。
クラス会では幸いというか似た状況の友もいた。考えてみれば実家も親も幼なじみも、いつ迄も変わらぬものなんて何も無い。変化には時に喪失感も伴うし、時に同じ境遇の者同士の共感が伴うだけの話なのだ。
友どもはそれぞれに別れを言い合い、それぞれの生活に帰っていった。

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